ホーチミンで「ととのう」:サウナ・水風呂・外気浴、そしてフロート

愛知県岡崎市にあるサウナ施設「龍城さうな」の外観。古い木造の建物の前に、休憩用のアウトドアチェアが並んでいる

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要点:「ととのう」とは、サウナ → 水風呂 → 外気浴(休憩)を何セットか繰り返したあとに訪れる、体がふわっと軽くなり、頭の中が静かに澄んでいくような感覚を表す日本のサウナ用語です。医学用語ではなく、その正体を直接調べた研究は、まだごく少数で小規模です。一方で、定期的なサウナや毎日の入浴が、心臓や脳卒中のリスクの低さと関連していることを示す大規模な観察研究はあります。ホーチミン(サイゴン)にも、フィンランド式サウナと水風呂のクラブ、韓国式チムジルバン、温泉スタイルの個室があり、タオディエン(Thảo Điền)のŌmni Spaceでは、赤外線&レッドライトサウナとプライベートの水風呂のあと、その「休憩」をフローティングで過ごせます。

Ōmni Recovery Library(リカバリー・ライブラリー)の一編 · Recovery by Temperature(温度で回復する)

Ōmni エビデンス評価:初期段階のエビデンス(サウナ・水風呂・休憩のサイクルと「ととのう」状態)。有望(定期的なサウナと心臓の健康、観察研究)。評価の基準はこちら。

日本では週末になるたびサウナへ通っていたのに、ホーチミンに来てから「ととのえる場所」が見つからない。駐在や長期滞在の方から、そんな話をよく聞きます。しかも外はいつも30度を超えていて、「この暑さで、さらに熱い部屋に入るのか」と思う日もあるでしょう。それでも、あのサウナ → 水風呂 → 休憩のリズムが恋しくなる。この記事では、そもそも「ととのう」とは何なのか、科学ではどこまでわかっているのか、そしてホーチミンでその感覚を取り戻したいとき、どんな選択肢があるのかを、できるだけ正直にまとめました。

「ととのう」とは何か

「ととのう」という言葉が広く知られる大きなきっかけになったのが、マンガ家でサウナ愛好家のタナカカツキさんが2011年に発表したマンガ&エッセイ『サ道』です。2019年7月にはテレビ東京でドラマ化され、番組では、サウナ室・水風呂・休憩(外気浴)を3回ほど繰り返したあとに得られる多幸感、一種のトランス状態として説明されています。そこから日本各地へサウナブームが広がり、「ととのった」という言葉も、いつの間にか日常会話に入り込むようになりました。

基本の流れは、とてもシンプルです。

  • サウナ:体がしっかり温まり、心拍が上がるまで過ごします。時間は人それぞれ。無理をする必要はありません。
  • 水風呂:汗を流してから、短く入ります。息を止めず、ゆっくり吐きながら入るのがコツです。
  • 外気浴(休憩):体を拭き、椅子やベンチに座って目を閉じ、何もしない時間を過ごします。多くの人が「ととのう」を感じるのは、この休憩の時間です。

サウナの本場といえば、まず名前が挙がるのがフィンランドです。熱い部屋で汗をかき、湖や雪で体を冷やし、そのあと外で休む。この「温・冷・休」のリズムを、日本では水風呂と外気浴という形で独自に磨き上げてきました。その背景には、銭湯や温泉とともに育ってきた日本の入浴文化があります。

愛知県岡崎市にあるサウナ施設「龍城さうな」の外観。古い木造の建物の前に、休憩用のアウトドアチェアが並んでいる
愛知県岡崎市のサウナ施設「龍城さうな」。建物の前には、外気浴を楽しむための椅子が並んでいます。写真:Asturio Cantabrio, Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0。

体の中で起きていること(ここは「もっともらしい仕組み」の話)

最初に、大事なことをひとつ。ここから説明するのは、生理学的には筋が通っている「仕組みの仮説」です。「ととのう」の正体そのものが、科学的に証明されたわけではありません。

サウナで温まると、心拍数が上がり、血管が広がって、軽い運動をしているときに近い状態になります。水風呂に入ると、今度は冷たさへの反応として交感神経が一気に働きます。チェコの研究では、14°Cの水に1時間つかった若い男性の血中ノルアドレナリンが約5.3倍(530%増)になりました。ただし、これは1時間の実験です。サウナ後に1〜2分入る水風呂とは条件がまったく違います。そして休憩に入ると、温と冷で大きく揺さぶられた体が少しずつ落ち着いていきます。この変化の幅が、あの「ふわっとした」感覚につながっているのではないか、と考えられています。同じ研究では、皮膚の温度に近い32°Cの水に1時間つかると、心拍数と血圧、コルチゾールがむしろ下がったことも報告されています。

科学で言えること、まだ言えないこと

「ととのう」を実際に測った研究

2023年には、「ととのう」状態の脳を調べた研究がPLOS ONEに発表されました。20人をサウナ群10人と、サウナに入らず休むだけの対照群10人に分け、サウナ(85〜90°C・10分)→ 水風呂(16°C・1〜2分)→ 休憩(7分)を3セット行ったところ、休憩中とサウナ後には脳波のシータ波とアルファ波が増え、注意に関わる脳の反応がより効率的になり、体のリラックス感も高まりました。なかなか興味深い結果ですが、参加者はわずか20人です。また著者は全員、脳波デバイスを開発する企業の社員で、関連する特許や製品についても申告しています。今のところは、「最初の手がかりが見えてきた」くらいに受け止めるのが妥当でしょう。

サウナと入浴を長く追った研究

もっと長い目で見た研究になると、規模はかなり大きくなります。フィンランドでは、中年男性2,315人を約20年追った研究で、週4〜7回サウナに入る人は、週1回の人に比べて心臓が原因の死亡が少ないことがわかりました。同じ地域の男女1,628人を追った解析でも、サウナに入る回数が多い人ほど脳卒中のリスクが低いという結果が出ています。

日本にも興味深い研究があります。40〜59歳の日本人30,076人を約20年追ったところ、ほぼ毎日湯船につかる人は、週2回以下の人に比べて心血管疾患のリスクが28%低く、脳卒中のリスクも低いことがわかりました。一方で、心臓突然死との関連は見られませんでした。

ただし、ここは大切です。これらはすべて観察研究です。「サウナや入浴をよくする人には病気が少なかった」とは言えても、「サウナや入浴そのものが病気を減らした」とまでは言えません。たとえば、毎晩ゆっくり湯船につかれる人は、生活習慣のほかの部分にも違いがあるかもしれません。そして、温冷交代浴や「ととのう」サイクルそのものを長期的に追った大規模研究は、まだありません。

Ōmni エビデンス評価:有望(定期的なフィンランド式サウナと心臓の健康)。大規模な長期研究が同じ方向を示していますが、いずれも観察研究で、対象もほぼフィンランド人です。

Ōmni エビデンス評価:初期段階のエビデンス(サウナ・水風呂・休憩のサイクルと「ととのう」状態)。小規模な研究がある段階で、まだ結論が出たとは言えません。とはいえ、その気持ちよさを楽しむのは、もちろん自由です。

知っておきたいリスク

水風呂の「コールドショック」。冷たい水に入った直後の数十秒から数分は、思わず大きく息をのみ、呼吸が速く浅くなり、心拍と血圧も急に上がります。これは誰にでも起こりうる反射で、冷水での事故の多くは、この最初の数分に起きると考えられています。水風呂では顔をつけない。息を止めない。呼吸法などで限界まで息を止めることを、水の中や水辺でしない。入るときはゆっくり、出たいと思ったらすぐ出る。これが基本です。

お酒とサウナは、別の日に。飲酒後のサウナや入浴は、血圧の急な低下や事故につながります。日本では2018年に家庭の浴槽で5,398人が溺死し、その9割以上が65歳以上でした。寒い脱衣所から熱い湯船へ移るような、急激な温度差が背景にあるとされています。

ホーチミンの暑さ。一日中すでに汗をかいたあとのサウナでは、思っている以上に水分を失います。始める前に水を飲み、途中でも補給し、少しでもおかしいと感じたらすぐに出ましょう。暑さ対策の基本はホーチミンの暑さ対策ガイドにまとめています。

ホーチミンで「ととのう」には

ホーチミンで少し難しいのが、外気浴です。外の空気は30°C前後、しかも湿度も高いので、日本のように「外へ出れば、すっと体が冷える」とはいきません。ここでは、エアコンの効いた室内や日陰で休み、扇風機や冷たい水も使いながら体を落ち着かせる、と考えたほうが現実的です。

場所の選択肢は、大きく分けると次のようになります。

  • フィンランド式サウナと水風呂のクラブ(タオディエンや1区):高温のサウナと冷たい水風呂を組み合わせる、日本の「ととのい」にいちばん近いスタイルです。多くは男女共用で、水着を着用します。
  • 韓国式チムジルバン(タオディエン、7区):大浴場に加えて、いくつもの温熱室と休憩スペースがあります。雨の長い午後を、のんびり過ごしたい人にも向いています。
  • 温泉スタイルのプライベートスイート(1区):温かい湯船、サウナ、水風呂が個室にそろうタイプです。ただし、市内に天然の温泉はありません。
  • プライベートの赤外線サウナ:高温の空気が苦手な人や、ひとりで静かに過ごしたい人に向く、比較的やさしい熱です。

施設名、場所、料金(確認日つき)は、英語版のサイゴンのサウナ・アイスバス・浴場ガイド(英語)に一覧でまとめています。日本語では、服装やマナーがわかるホーチミンのサウナ旅行者ガイドと、温冷交代浴のやり方を研究をもとに解説した交代浴ガイドもあります。

東京都練馬区の銭湯「たつの湯」。宮造りの瓦屋根と高い煙突、入口のソテツ
東京・練馬の銭湯「たつの湯」。日本のサウナ文化の背景には、銭湯や温泉とともに育ってきた入浴文化があります。写真:Kurihaya, Wikimedia Commons, CC0。

Ōmniの場合:「休憩」をフローティングで

最初にはっきりお伝えすると、Ōmni Spaceは温泉でも、フィンランド式サウナでも、チムジルバンでもありません。タオディエンにある、小さく静かなフローティング施設です。2017年からベトナム初のフローティング施設を運営してきたFloat Vietnamのチームがつくりました。ここで体験できるのは、次の3つです。

  • プライベートの赤外線&レッドライトサウナ:フィンランド式のように空気そのものを高温にするのではなく、赤外線で体を温める、比較的やさしい熱です。85〜90°Cの本格的なサウナを求めている方には、上で紹介したクラブのほうが合っています。水着は不要です。
  • プライベートの水風呂(コールドプランジ):30分、自分のペースで使えます。短く何度か入っても、一度ゆっくり入っても構いません。水着はご持参ください(貸し出しはありません)。
  • フローティング:「ととのう」サイクルでいう、最後の「休憩」にあたる時間です。

フローティングでは、約500 kgのエプソムソルト(ミネラル豊富で比重の高い塩)を溶かした、深さ約25 cmのお湯にあおむけになります。水温は33〜34°Cで、皮膚の温度に近く、部屋を真っ暗で静かな空間にすることもできます。体重をすべて水に預けると、外気浴のような「何もしない時間」を、そのまま長く過ごせます。外が暑いホーチミンで、外気浴の場所に困っている方にとっては、ひとつの選択肢になるかもしれません。

料金は、フローティング(1人用)が60分1,500,000 VND、90分2,000,000 VND。2人用ルームでは、2人目は700,000 VNDの追加です。サウナと水風呂は、それぞれ単体で450,000 VND、フローティングに追加する場合は200,000 VNDです。

Sauna & Float(11月):90分のフロートを予約するとき、赤外線&レッドライトサウナを無料で追加できます(フロート前の20分)。サウナは水着不要、水風呂は別料金です(単独450,000 VND、フロートと一緒なら200,000 VND、水着はご持参ください)。

Ōmni Spaceの赤外線&レッドライトサウナの室内。天井の赤いLEDパネルの下に木のベンチ
Ōmniのプライベート赤外線&レッドライトサウナ。フィンランド式よりも、やさしい熱を感じるタイプです。写真:Ōmni Space。

フローティングとストレスの関係については、これまで研究が積み重ねられてきました。フローティングは、これまで数百の科学研究で調べられています。スウェーデンのランダム化パイロット試験では、働く大人65人が7週間で12回フローティングをしたところ、順番待ちのグループと比べて、ストレスと不安が減り、睡眠の質も良くなったと回答しました。

Ōmni エビデンス評価:強いエビデンス(フローティングとストレス)。これらの試験に加え、利用者の体験が圧倒的に好意的であることから「強いエビデンス」と評価しています。2025年の常連利用者調査では92%がリラックスを、77%がストレス軽減を報告しており、多くのレビューやRedditなどの掲示板、フローティングを取り入れるアスリートや著名人の声も同じ傾向です。

Ōmni Spaceのオレンジ色のラウンジ。丸いロゴの灯りが壁にやわらかく光っている
セッションの前後に、ゆっくり過ごせるŌmniのラウンジ。写真:Ōmni Space。
Ōmni Spaceのプライベートフローティングルーム。青いLEDにやさしく照らされた静かな水面
サウナと水風呂のあとの「休憩」に。暗く静かな、プライベートのフローティングルームです。写真:Ōmni Space。

Ōmni Space – Float Saigonは、16C Quốc Hương, Thảo Điềnにあります。毎日9:00〜21:00営業で、最終フローティングは20:00開始、予約なしのご来店は18:00まで受け付けています。各ルームには専用シャワーがあり、タオル、シャンプー、ボディソープ、ドライヤーもご用意しています。

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よくある質問

「ととのう」は医学的に証明されていますか?

いいえ。脳波を調べた小規模な研究(20人)はありますが、まだ初期段階です。一方で、定期的なサウナや入浴が、心臓や脳卒中のリスクの低さと関連することを示した大規模な観察研究はあります。

ホーチミンで水風呂に入れる場所はありますか?

あります。タオディエンや1区のサウナクラブ、1区の温泉スタイルの個室、タオディエンのŌmni Spaceなどが選択肢です。施設と料金の一覧は、英語版のサイゴンのサウナ・アイスバス・浴場ガイドにまとめています。

暑いホーチミンでも外気浴はできますか?

外は30°C前後で湿度も高いため、日本と同じようには体が冷えません。エアコンの効いた室内や日陰で、水を飲みながら休むのがおすすめです。

Ōmniのサウナはフィンランド式ですか?

いいえ。赤外線&レッドライトを使ったプライベートサウナで、フィンランド式よりやさしい熱です。プライベートの水風呂(30分)とフローティングを組み合わせることもできます。

水着は必要ですか?

Ōmniでは、サウナとフローティングルームでは水着は不要です。水風呂を使う場合のみ、水着をご持参ください(貸し出しはありません)。

サウナ、水風呂、フローティングを提供する、タオディエンのŌmni Space – Float Saigonのチームが書きました。一般的な情報を目的としたもので、医療上の助言ではありません。参考文献は2026年10月30日に確認しました。

参考文献

  1. Chang M, Ibaraki T, Naruse Y, Imamura Y (2023). A study on neural changes induced by sauna bathing: neural basis of the “totonou” state. PLOS ONE 18(11): e0294137. doi:10.1371/journal.pone.0294137.
  2. Laukkanen T, Khan H, Zaccardi F, Laukkanen JA (2015). Association between sauna bathing and fatal cardiovascular and all-cause mortality events. JAMA Internal Medicine 175(4): 542–548. doi:10.1001/jamainternmed.2014.8187.
  3. Kunutsor SK, Khan H, Zaccardi F, et al. (2018). Sauna bathing reduces the risk of stroke in Finnish men and women: a prospective cohort study. Neurology 90(22): e1937–e1944. doi:10.1212/WNL.0000000000005606.
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  5. Šrámek P, Šimečková M, Janský L, et al. (2000). Human physiological responses to immersion into water of different temperatures. European Journal of Applied Physiology 81(5): 436–442. doi:10.1007/s004210050065.
  6. Tipton MJ, Collier N, Massey H, et al. (2017). Cold water immersion: kill or cure? Experimental Physiology 102(11): 1335–1355. doi:10.1113/EP086283.
  7. テレビ東京(2019年12月10日)ドラマ「サ道」のお知らせ(2019年7月19日〜10月4日放送、原作:タナカカツキ『マンガ サ道』、「ととのう」の説明)。
  8. nippon.com(2020年1月9日)家庭の浴槽での溺死者数(厚生労働省 人口動態統計より)。
  9. Kjellgren A, Westman J (2014). Beneficial effects of treatment with sensory isolation in flotation-tank as a preventive health-care intervention: a randomized controlled pilot trial. BMC Complementary and Alternative Medicine 14: 417. doi:10.1186/1472-6882-14-417.
  10. Hilpert K, Chis Ster I (2025). Experiences and perceptions of regular floatation-REST users: results from an online survey. Journal of Clinical Images and Medical Case Reports 6(5): 3600.

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